スタローンが世界アームチャンプに挑む!『オーバー・ザ・トップ』

『オーバー・ザ・トップ』オリジナルポスター

1987年、当時シルベスター・スタローン人気が最高潮の日本で洋画配収ランキング年間5位となる大ヒットを記録した『オーバー・ザ・トップ』は、スタローンの代表作のひとつとして今もなお高い人気を誇る作品だ。しかし、日本とほぼ同時に公開されたアメリカでは大コケ、批評家筋から酷評が相次いだことを知る人は意外と少ないかもしれない。

スタローン自身「金のために作った映画」と告白したそのギャラは、脚本料込みで1200万ドル。当時の史上最高額だ。

アメリカ国内では奮わず、わずか1600万ドルの興収に終った本作だが、意外にも近年アメリカで再評価の動きを見せており、2014年に米ローリングストーン誌が発表した『スタローンのベスト映画トップ10』では、『ロッキー』『ランボー 』『コップランド』に継いで4位にランクインしている。

そんな『オーバー・ザ・トップ』のストーリーは、スタローン演じるトラック運転手リンカーン・ホークがアームレスリングを通して10年ぶりに再会した息子との絆を取り戻していくというもの。

義父ジェイソンとの確執から妻子を捨てトラック運転手として孤独に生きるホークは、病床の妻クリスティーナの願いを受け、息子マイケルをニューヨークからクリスティーナが待つカリフォルニアの病院まで送る旅に出る。すぐには父を受け入れられないマイケルと旅を続けるうちにふたりは絆を深めていくが、ホークを嫌うジェイソンの妨害で事態は思わぬ方向へ向かっていく──。

これ以上ないほどシンプルなストーリー展開のなかにも、スタローンらしい名台詞がドラマを盛り上げる役割を果たしているあたりはさすがといったところで、息子に語りかける前向きな言葉にはこちらまでも勇気づけられるものがある。

クライマックスに至るまでが地味なトーンになるのを避けるためか、街中で繰り広げられるカーチェイスや、ホークが怒りにまかせて義父の豪邸をトラックで破壊するシーンが用意されているが、いかにも80年代映画らしいサービス精神とはいえ、この点だけはやりすぎ感が否めない。

しかし、本作の最大の見せ場はクライマックスとなるアームレスリング大会で、ホークは人生を賭けて大会に挑むことになる。優勝賞品がコンボイトラックというのはかなりご都合主義的な展開だが、見た目ではとても敵いそうにないケダモノのようなアームレスラーたちに立ち向かうホークの雄姿には誰もが胸を熱くさせられること必至だ。

監督は80年代を席巻したキャノン・フィルムズ総裁のメナハム・ゴーラン。なにかと色物的に見られがちなメナハム・ゴーランだが、アームレスリングという特殊なテーマでここまで面白い映画を作った手腕はもっと評価されるべきだろう。


『オーバー・ザ・トップ』に登場する
アームレスラーたち


アームレスリング大会に参戦するアームレスラーたちは、まるで漫画から飛び出してきたような強烈なキャラクターが揃い、クライマックスを最高に盛り立てている。

「テーブルで向かい合う奴は全員醜い敵だ!」優勝3回のベテラン、ジョン・グリスリー。

ジョン・グリズリー(ブルース・ウェイ)

「激励は必要ない。勝つと言えば俺は勝つ。俺はベストだ!」孤高のマッスルモンスター、マッド・ドック・マディソン。

マッド・ドック・マディソン(ランディー・ラニー)

「俺はエンジンでこれ(腕)はプラグ。ぶっ飛ばしてやる!」怒れるアームレスラー、ハリー・ボスコ。

ハリー・ボスコ(サム・スカーバー)

「ねじふせるのは簡単だ。おれには経験で得た54の必殺技がある。」カナダで2年連続優勝のテクニシャン、カール・アダムス。

カール・アダムス(ポール・サリヴァン)

「相手の腕の骨をヘシ折るのはいい気分だぜ。おれにはトップしかない。2位は屁だ。」世界選手権5度優勝の現アーム・チャンプ、ブル・ハーリー。

ブル・ハーリー(リック・ザムウォルト)

ブル・ハーリーを演じたリック・ザムウォルトは『オーバー・ザ・トップ』に出演時、実際にアームレスラーとして活躍。2003年に亡くなるまで『プレシディオの男たち』(1988年)や『バットマン リターンズ』(1992年)をはじめ、映画やTVシリーズで数々の出演作品を残している。


『オーバー・ザ・トップ』作品情報


原題:Over the Top
監督:メナハム・ゴーラン
脚本:シルベスター・スタローン、スターリング・シリファント
出演:シルベスター・スタローン、デヴィッド・メンデンホール、ロバート・ロジア
音楽:ジョルジオ・モロダー
全米公開:1987年2月13日
日本公開:1987年2月14日
全米映画ランキング:初登場4位
全米興行収入:1606万ドル
日本配給収入:12億4100万円