スタローンが過保護なママに困る!アクション・コメディ『刑事ジョー ママにお手あげ』

ひとめで映画の内容が伝わるポスターアートは出色の出来栄え

どんなハリウッドスターでも、俳優人生において失敗作はつきもの。幾度かの低迷期を経ながらも数々のヒット作を生み出してきたシルベスター・スタローンでもその例に漏れず、いくつか明らかな失敗作がある。その中でもスタローン本人も出演を後悔していると認めた一本が1992年に公開された『刑事ジョー ママにお手あげ』だ。

その当時のライバル、アーノルド・シュワルツェネッガーが『ツインズ』(1988年)や『キンダガートン・コップ』(1990年)といったコメディ作品でも大成功を収めた頃、スタローンも『クラブ・ラインストーン/今夜は最高!』(1984年)以来となるコメディ作品への出演を検討するようになっていた。そんなとき、スタローンのもとにオファーが舞い込んだのが『刑事ジョー ママにお手あげ』だった。

初めにオファーを受けていたシュワルツェネッガーは脚本の出来に満足できず出演を辞退していたが、そのことを知らずにシュワルツェネッガーが出演すると思ったスタローンは我先にと出演を決めてしまったという。

監督は『ターナー&フーチ/すてきな相棒』(1989年)や『エア・アメリカ』(1990年)のロジャー・スポティスウッド。脚本は『ツインズ』を書いたウィリアム・デイヴィス&ウィリアム・オズボーンのコンビにブレイク・スナイダーが加わり、『ツインズ』と『キンダガートン・コップ』の監督アイヴァン・ライトマンが本作では製作を引き受けた。

タフな刑事が過保護な母親に振り回されるアクション・コメディと聞けばある程度の面白さが保証されているようなものだが、実際そうはならなかった。

スタローンは本作でオムツ姿まで見せて奮闘しており、それなりに違和感のないコミカルな演技を見せているが、主人公の母親を演じたエステル・ゲティ以外の脇役の俳優陣が弱く、また映像も全体的に極めてチープな印象だ。同年に公開された『リーサル・ウェポン3』の製作費が3500万ドルということを考えると、本作のどこに4500万ドルという高額な製作費がかけられたのか疑問しかない。

スタローンとエステル・ゲティによる親子のほのぼのとした掛け合いに頼りすぎたのか、ストーリーは凡庸でアクションシーンもイマイチ。そもそもロジャー・スポティスウッドに映画監督としての技量がないのか、スタローンが主演でなければ見られたものではない作品である。


『刑事ジョー ママにお手あげ』興行成績


1992年2月21日に全米公開された『刑事ジョー ママにお手あげ』は、公開第1週末で706万ドルを稼ぎ出し、前週に公開され大ヒットとなっていた『ウェインズ・ワールド』に次ぐ2位デビューとなった。

最終的な全米興収は2841万ドルとなり米国内だけでは4500万ドルといわれる製作費を下回ったが、他国でのヒットによりこの年の全世界興収では25位に食い込む健闘を見せ、大ヒットとはいえないまでもまずまずの成績を残した。


『刑事ジョー ママにお手あげ』作品情報


原題:Stop! or My Mom will Shoot
監督:ロジャー・スポティスウッド
脚本:ブレイク・スナイダー、ウィリアム・オズボーン、ウィリアム・デイヴィス
出演:シルベスター・スタローン、エステル・ゲティ、ジョベス・ウィリアムス
音楽:アラン・シルヴェストリ
全米公開:1992年2月21日
日本公開:1992年5月30日
全米映画ランキング:初登場2位
全米興行収入:2841万ドル
全世界興行収入:7061万ドル