涙なくして観られない圧巻の怪作!『ランボー ラスト・ブラッド』

『ランボー ラスト・ブラッド』オリジナルポスター

前作『ランボー/最後の戦場』(2008年)でランボーは故郷に帰った。あまりにも長きに渡る戦いから解放されたランボーは、ようやく平穏な暮らしを送ることができるだろうと誰もが思ったはず。

それから約10年が経ち、本作『ランボー ラスト・ブラッド』では、かつてベトナムの戦場で救えなかった仲間たちへの贖罪を果たすかのようにボランティアで人命救助に身を捧げながらも、故郷アリゾナの牧場で古くからの友人マリアとその孫娘ガブリエラと穏やかな余生を過ごすランボーの姿が描かれる。

一見すると心の平穏を見つけたかのように思えるランボーだが、今もなお戦争の記憶に苛まれたままで、牧場の地下には迷路のように入り組んだトンネルを掘り、広大な要塞を築き上げている。常に薬を服用しながら、社会に溶け込もうと暗い過去に無理やり蓋をして生き続けるランボーの姿はとにかく悲しい。

苦しみながらもささやかな幸せを掴んだランボーだが、そんな暮らしも単身メキシコに渡ったガブリエラが人身売買組織に囚われてしまったことで急変してしまう。実の娘のように育ててきたガブリエラが想像を絶するような酷い目に遭わされ、ランボーはかつての殺人マシーンへと戻っていく。復讐からは何も生まれないが、奪われた側は理不尽な悪事に何もしないままでいられるのだろうか。心に閉じていた蓋を開けてしまったランボーはもう誰にも止められないのだ。

物語はいたってシンプルで、捻りや細かい考察もなく全てが予想通りに進んでいく。しかし、ランボーが戦争で負った心の傷からいつしか芽生えてしまった異常性が見え隠れすることで、短い尺の中にも作品に不思議な奥行きを感じさせている。

ガブリエラという生きがいを失い、ランボーはかつて自分が生きてきた戦争へと観客もろとも引き摺り込んでいく。

まさにシリーズ1作目のテーマでもある「一人だけの軍隊」であり、ランボーが惨い仕打ちを受けて、敵を返り討ちにするという展開は、同じくシリーズ第1作の繰り返しでもある。第1作の原題『First Blood』に対して、本作の『Last Blood』でシリーズを締めくくるタイトルは見事というほかない。

クライマックスにあたるランボーの牧場で繰り広げられる犯罪組織の軍勢との決戦は壮絶そのもの。事前にトラップを仕掛けたトンネル内に敵をおびき寄せ、まるで長年自分が見てきた悪夢をこれでもかと見せつけるかのように恐怖と痛みを味わせたうえで、次々と処刑を続けていくランボー。

すでに生き絶えた者にもさらに銃弾を撃ち込むなど、明らかに度を越した殺戮描写はアクション映画にありがちな暴力の正当化を感じさせず、カタルシスよりも虚しさすら感じるほどだ。

人生の終わりを常に探し続けてきたランボーの旅はこれで終わってしまうのか。それとも新たな終わらない地獄が始まろうとしているのか。観客に解釈を委ねるラストシーンにはやっぱりぐっときてしまう。


全米で前作超え!『ランボー ラスト・ブラッド』の興行成績


2019年9月20日に全米公開された『ランボー ラスト・ブラッド』は、オープニング興収1887万ドルを稼ぎ出し、全米ボックスオフィスランキングで3位デビューを果たした。

公開当時、大手映画レビューサイトRotten Tomatoesでは批評家から28%と酷評される一方で、観客評価では84%と高評価を得るなど、いつものスタローン作品らしく批評家と観客とで温度差があるものになっていた。

そして、公開を終える11月21までの間に米国内で4482万ドルを稼ぎ出し、4275万ドルの前作『ランボー/最後の戦場』越えを果たした。


『ランボー ラスト・ブラッド』作品情報


原題:Rambo: Last Blood
監督:エイドリアン・グランバーグ
脚本:マシュー・シラルニック、シルべスター・スタローン
出演:シルべスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、オスカル・ハエナダ
音楽:ブライアン・タイラー
全米公開:2019年9月20日
日本公開:2020年6月26日
全米映画ランキング:初登場3位
全米興行収入:4482万ドル


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