シュワルツェネッガーが殺人サバイバル番組に挑むSFアクション大作『バトルランナー』

『バトルランナー』オリジナルポスター

『ターミネーター』『コマンドー』『プレデター』など順調にキャリアを築いたアーノルド・シュワルツェネッガーが、1987年12月12日、ついに正月映画に初登場! 公開当時、「正月は俺に任せろ!」「’88正月最強最大」と大展開されたのが『バトルランナー』だ。

『バトルランナー』日本版ビジュアル

監督は、テレビドラマ『刑事スタスキー&ハッチ』のスタスキー刑事役で人気を博し、その後監督業に専念したポール・マイケル・グレイザー。シュワルツェネッガーは、無実の罪を着せられ、犯罪者として殺人サバイバル番組『ランニング・マン』に出演させられる元警官ベン・リチャーズを演じる。

舞台は2017年、警察国家により統治された近未来のアメリカ。あらゆる娯楽も政府により管理されるなかで、人々は殺人サバイバル番組『ランニング・マン』に熱狂していた。

犯罪者が“ランナー”として出演し、それを追う“ストーカー”から逃げ切ることができれば無罪釈放となるこの番組は、史上最高の視聴率を獲得するほどの人気番組だが、このところ番組を盛り上げる屈強なランナー探しに苦労していた。

そんなあるとき、番組のホストを務めるデーモン・キリアンが偶然目にしたのが脱獄ビデオに映っていた元警官ベン・リチャーズだった。

脱獄後、海外逃亡を図り空港で逮捕されていたリチャーズは、番組出演のオファーを断るが、同じく脱獄後に逮捕されていた仲間たちの解放を条件に出演を承諾する。しかしその約束は果たされず、リチャーズは仲間とともに『ランニング・マン』に出演させられ、ストーカーたちに闘いを挑むことになった──。

極悪プロデューサー・司会者のデーモン・キリアン

セット、衣装、小道具など、とても大作とは思えないほど全体的に安っぽさが漂う本作だが、見所はなんといっても突き抜けたセンスを持つストーカーたちの存在だ。

ゾーン1で対戦するサブゼロは、アイスホッケーのコスチュームに身を包み、鋭い刃をもったホッケースティックと爆弾を仕込んだパックを武器に、これまで30人以上のランナーを血祭りに上げている強者。

氷上の死の料理人“プロフェッサー”サブゼロ!

第2の対戦ストーカー、バズソーはバイクを持ち上げるほどの怪力の持ち主で、チェーンソーを自由自在に操る。

前年度のチャンピオンストーカー、バズソー!

第3の対戦ストーカー、ダイナモはオペラを歌いながらハリボテのようなバギーを乗り回し、腕から電気ビームを出すエンターテイナー。その歌唱力はストーカー界No.1だ!

“人間クリスマスツリー”ダイナモ!

4番目に登場するファイアー・ボールは背につけたロケット噴射で空を飛び、火炎放射機で敵を焼き殺す。

頼れるベテランストーカー、ファイアー・ボール!

そして、最後に登場するのは、現役を引退し解説者として活躍する伝説のストーカー、キャプテン・フリーダム。演じるのは『プレデター』に続き2作連続でシュワルツェネッガーと共演となったジェシー・ベンチュラ。

屈強な警備員スヴェンとキャプテン・フリーダム

復帰を指示されたキャプテン・フリーダムはよくわからない武器を装着され、キリアンにキレまくるが…。

メディアに対しての風刺を盛り込んだストーリーは、別の切り口で描き直しても面白くなりそうだが、『バトルランナー』はこの珍妙な仕上がりが却ってカルト的な人気につながった稀な作品だ。


原作はリチャード・バックマンこと、
モダン・ホラー界の大物スティーヴン・キング


スティーヴン・キングは、自らの名前を伏せ、ペンネームで発表する本がどれだけ売れるのかを試してみようとリチャード・バックマンを名乗り作品を出版したといわれ、『バトルランナー』もその中の一作として発表された。その後、ファンによってリチャード・バックマンがスティーヴン・キングであることが見破られるが、プロデューサーのジョージ・リンダーが『バトルランナー』の映画化権を獲得したときには、リチャード・バックマンの正体はまだ明かされていなかった。

原作では、主人公リチャーズは一般の庶民で、舞台も限定されたエリアではなく全米全土を逃げ回る設定になっており、ラストも映画版とは大きく異る衝撃的な結末が用意されている。

『バトルランナー』の原作は短編集『バックマン・ブックス〈1〉バトルランナー』(扶桑社ミステリー)に収録されている。


シュワルツェネッガー主演作史上最高の製作費が投じられた
『バトルランナー』


『バトルランナー』の製作費には、『コナン』シリーズから『プレデター』までの主演作をはるかに凌ぐ、当時のシュワルツェネッガー主演作史上最高額となる2500万ドルが投入された。作品には製作費に見合ったスケール感は感じられないが、全体に漂うチープな雰囲気が逆に味わい深い。

シュワルツェネッガー主演作の製作費
・コナン・ザ・グレート(1982年):1600万ドル
・コナンPART2(1984年):1800万ドル
・ターミネーター(1984年):640万ドル
・コマンドー(1985年):1000万ドル
・ゴリラ(1986年):1100万ドル
・プレデター(1987年):1500万ドル
・バトルランナー(1987年):2500万ドル


『バトルランナー』サウンドトラック


『ビバリーヒルズ・コップ』のサウンドトラックでグラミー賞を受賞し、『トップガン』のスコアでも知られるハロルド・フォルターメイヤーが『バトルランナー』の音楽を担当。本作でもハロルド・フォルターメイヤーの特徴的なシンセサイザーやキーボードで全編が構成されている。

サントラ盤には、キャプテン・フリーダムがハッスルする劇中の大人気テレビ番組のテーマ曲『キャプテン・フリーダムのワークアウト(Captain Freedom’s Workout)』も収録。しかし、ジョン・パーによるエンディングテーマ『Restless Heart』は未収録となっている。


『バトルランナー』作品情報


原題:The Running Man
監督:ポール・マイケル・グレイザー
脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、マリア・コンチータ・アロンゾ、ヤフェット・コットー、リチャード・ドーソン、ジム・ブラウン、ジェシー・ベンチュラ
音楽:ハロルド・フォルターメイヤー
全米公開:1987年11月13日
日本公開:1987年12月12日
全米映画ランキング:初登場1位
全米興行収入:3812万ドル
日本配給収入:5億5000万円